池田町観光協会

COLUMN

2018/8/1
観光地「いけだ」の礎と未来へ
観光地「いけだ」の礎と未来へ

ここで、私なりの池田町の景観や歴史・文化に触れてみたいと思います。少し硬いお話になりますがお付き合いください。

日高山系の大いなるふところにいだかれ、みのり豊かな十勝平野の中央やや東寄りに位置する、ここ池田町。開拓の頃より一貫して池田町に住む人々の原点は「土とどうつきあうか」ではなかったか。気まぐれな自然があらあらしい野生の相貌をちらっとのぞかせるだけで十勝平野の火山灰地は農民の意思をしたたかに蹂躙し、困難を押し付けてきた。

そこで50有余年前、のびやかな農村らしい生活と風物詩を大切にしたいという先人たちの思いにより池田町のブドウ造り、そして自治体が鈴を付けワイン造りがはじまる。南方原産の稲は、弛みない農民の努力により定着している。野山には山ブドウが自生する。圃場でのブドウ栽培はまだこれから、この地の寒さに合う品種を改良していないだけ・・・。

ブドウ造りの要は年間平均気温ではなく育成成長期の7~8月の気温とこの地の「土」。 そして「あわてず あせらず あきらめず」が今でも町民のアイデンティティーとして根付いている。この言葉を胸に土と向き合い、節を曲げずに独自品種の清見・山幸・清舞がうまれる。このかた池田町の十勝ワインは長期熟成にたえうるすっきりとした辛口を造り続けている。「ひと」と「自然」の調和が生み出す「ワイン創り」。私たち町民が誇りに思う「十勝ワイン」です。
清見ヶ丘公園に建つ石碑(是非、池田町に立ち寄る事があるときは清見ケ丘公園に行ってみて下さい)

ワイン城を真北に進み白樺の木立を抜けた清見ヶ丘公園にはこの町を知る上で興味深い3つの石碑が鎮座します。1つ目は、パークゴルフ場東屋右側にある池田農場管理人久島重義の顕彰碑です。重義は旧鳥取藩主池田仲博侯爵が払い下げを受けた国有未開地730haの開墾の責任者として池田農場に着任。鳥取・石川・福井県から入植した農場の小作人らに寄り添い苦楽を共にする。入植からの願いである小作人への土地解放を実現できず、池田町にて1934年生涯を閉じるが、重義の徳を忍び建立されました。碑字は重義の札幌農学校時代の一期先輩で親交を続けた南鷹次郎(後の北大総長)によります。この池田農場が町名の由来になっています。

2つ目は、池田農場解放記念碑。この石碑は清見温泉正面左わきにあります。「北海道に行けば自作農になれる、よし行こう!」鳥取・石川・福井県での池田農場の小作人募集員の ”開き分け” の勧誘は、土地の分与にあずかれない農民にとって大変な魅力であり多くの入植を決意させました。しかしそれはまさに “おいしい言葉” でした。以来「いつかは自分の土地になるんだ」との思いで農民は覚悟を決め勤勉かつ堅実に生き、管理人久島重義の請願も虚しく池田家の方針により実現をみなかったのです。この碑は1940年建立され、入植50年目にして池田農場から解放され自作農化していった農民たちの記念碑です。池田町の開拓ものがたりは清見ヶ丘公園から少し離れた清見地区にあるアイスクリーム工場ハッピネス・デーリィー駐車場手前の大きな看板に「清見物語」として詳しく記されて
います。

最後に、吉屋信子「地の果まで」文学碑私は彼女の名前だけは知っていましたが、鎌倉の由比が浜にあり、昨年国の登録有形文化財にも指定された「吉屋信子記念館」を訪れる機会がありました。大正末から昭和期にかけて少女小説、家庭小説、歴史小説に至り、その作品数の多さと、その後の女流文人たちの生き方に与えた影響の大きさに驚いたものです。最晩年の大作「女人平家」は70歳を超えてからの執筆というのは驚きしかありません。その信子の文壇デビューは池田からだったのです。池田町と信子のつながりは実兄の忠明が当時池田町にあった日本皮革会社池田製渋工場の所長であったことです。兄に来勝を誘われ、23歳の信子は1919年アカシアの花がきれいだったと述懐する5月から7月まで池田町に滞在。兄忠明の官舎の一室にてわずか3カ月で書き上げた「地の果まで」が同年朝日新聞の懸賞小説に当選します。狩勝峠を列車で超える件を記すこの石碑は、公園内パークゴルフ場駐車場奥に位置しています。

明治から大正、昭和にかけて池田町の清見地区には、それぞれの時代を一途に生きた先人たちの息づかいを感じることができます。土と向き合い、決してあきらめることなくこの地で大きな仕事を成し遂げた先人たち。私はこの町のこれまでを踏まえ、これからは多くの町民とふれあいながら意見を交わし「観光のまち 池田」を共に盛り上げていきたいと思います。そして、来町していただいた方々が池田に定住・移住したいと思っていただける「まちづくり」を想像していきたいと思います。先人たちの思いを継承しながら・・・。

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